アメリカの投資家ブーン・ピケンズ氏によるトヨタ系の自動車部品メーカー「小糸製作所」(東京都)の株式買い占めは、平成時代初期のバブル経済期の1989年に起きた。当時の日本経済のエスタブリッシュメント(既成勢力)を震撼させた。
トヨタ自動車を抜き筆頭株主(26%)に
ピケンズ氏率いる米国ブーン社は1989年3月、小糸製作所の筆頭株主になった。 当時同株を買い占めていた麻布建物の渡辺喜太郎から、1株3375円で買い取ったのだ。 購入額は約1400億円だった。保有比率は26%で、小糸の親会社のトヨタ自動車(19%)を大きく上回った。
トヨタ自動車の系列関係を批判
ピケンズ氏側は、小糸側への役員派遣や帳簿閲覧など「株主権」に基づく様々な権利を主張した。 小糸側とトヨタ自動車の系列関係を批判した。
日米経済摩擦のロビー活動
ピケンズ氏はアメリカの政府当局者に対しても、日米経済摩擦(日米構造協議)に絡む問題として執ようなロビー活動(ロビーイング)を繰り返した。1989年、1990年の小糸の株主総会には。多数の米国人株主などを率いて来日。 小糸側に役員受け入れなどを要求していた。
麻布建物に売却
1991年6月26日、ピケンズ氏側は、4200万株の保有株すべてを元の所有者である麻布建物へ売り戻す手続きを始めた。 麻布側は、5%ルールに従い、大蔵省(現:財務省)に報告した。 「系列化」をめぐり日米経済摩擦にまで発展した小糸株問題は、決着した。