早大で起業家養成講座

優秀者にはオフィス提供

(2005年3月19日、朝日新聞)

オープン教育センター
大和証券グループ

大和証券グループは2005年4月から早稲田大学の「オープン教育センター」にベンチャー起業家を養成するための基礎講座を開設する。どの学部の学生でも履修ができる。楽天を参考事例にした実践的な教材を独自に開発し、成功と失敗の分かれ目などを解説する。講座の後半に予定しているビジネスプラン発表会で最優秀に選ばれた学生1人に起業に必要なオフィスを1年間無料提供するなどの特典も用意している。

ベンチャー起業家を養成
ビジネスプラン発表会

講座は2005年4~7月の全15回で、25人の学生を対象にする。講師には、グループ内でベンチャー企業への融資を手掛けたり、新興企業の株式公開を担当したりしたスタッフを派遣する。

インターンシップ

学生のやる気を引き出すため、最優秀者にはさらに、早稲田大の起業支援機関と連携して、マンツーマンで、発表したビジネスプランを事業化するうえで改善すべき点を指摘したり、資金調達の方法なども指導したりする。さらに優秀者上位2人をインターンシップ生として受け入れ、アナリストが起業を考えている業界の現状や市場動向などを個別に教える。

ベンチャー企業設立数

早大は、ベンチャー企業設立数(2000年から2004年8月末までの累計)で65と最多。大和証券グループは講座開設を通じてベンチャー投資の案件発掘に役立てる狙いがある。

大隈庭園に5平方メートル、学生が田おこし

ワセダに田んぼ

(2004年2月13日、朝日新聞)

早稲田田圃
開田式
学生が食と農を考えるシンボルにしようと早稲田大学(新宿区)の大隈庭園で2004年2月12日、早稲田田圃(たんぼ)の開田式が行われた。1882(明治15)年の創立当時は周辺に水田があったが、明治時代半ばにはほぼ姿を消したといわれ、それ以来の登場になる。2004年5月には田植えをする予定だ。
白井克彦総長
学生
芝生が広がり、梅や桜の樹木が生い茂る大隈庭園の一角にしつらえた水田の面積は約5平方メートル。この日は、白井克彦総長らが鍬(くわ)入れ式を行った後、早速、学生約20人が田おこしと肥料作りを始めた。
土壌作り
田起こしはクワやスコップで土を50センチほど掘り、枯れ葉をまぜて、稲が育ちやすい土壌にする。「木の根がこんなに張っているんだ」などと驚きながら、作業を進めた。枯れ葉に米ぬかをまぜ、肥料を作る作業も行った。
農楽塾
平山郁夫記念ボランティアセンター
早大オープン教育センターの「農山村体験実習」の授業を受けた学生らで結成した農楽塾が主体になり、平山郁夫記念ボランティアセンターの事業の形をとっている。
屋代村塾
大塚勝夫・元早大教授
農楽塾代表で、早稲田大政経学部2年朽木新さん(21)、米どころ山形県南陽市出身。「人間を大事にする農にこだわりたい。農を通じて人の輪が広がっていく」。学生たちは、山形県高畠町に大塚勝夫・元早大教授(故人)が開いた私塾「屋代村塾」で、農村生活の素晴らしさを体験したという。

早大がオープン化を図り大学改革

アジア太平洋地域における知の共創

(2002年12月6日、読売新聞)

私立大学の少子化
象牙の塔

日本経済の困難の状況とともに、日本の大学も厳しい状況に立たされている。国立大学には独立行政法人化が、私立大学には少子化が、のしかかる。大学を取り巻くこれらの困難の原因は、かつて「象牙(ぞうげ)の塔」と批判された構造が依然として十分に打開されていない点にある。

国立大学の独立行政法人化

そうとらえれば、現状克服の方策を見いだすことは、そう難しくはない。すなわち、大学のあらゆる面で〈オープン化〉を進めることである。

テーマカレッジ
全学共通の科目群

第一のオープン化は、従来の学部の枠を超えうる制度を作ることである。学部をまたいで学生が自由に科目を選択したり、複数の専門を同時に勉強できるようにするのである。早稲田大学ではすでに全学共通の科目群を提供するオープン教育センターを設置している。そこには、「テーマカレッジ」という制度がある。これは、教員集団が共通のテーマのもとに多数の講義とゼミを開設し、そこに、関心を持つ学生たちが学部横断的に集まって、学んでいる。このシステムは、とりわけ新入生に、大学生らしい勉学意欲を起こさせる、強い動機付けのシステムとして機能している。

日本女子大、学習院大、学習院女子大、立教大

fキャンパス

第二のオープン化は、大学間連携である。お互いの強みを出し合うことで、教育・研究の両面でシナジー効果が現れる。最大の連携は、総数42校で構成される「大学コンソーシアム(共同体)京都」だが、これには早稲田も参加している。さらに早稲田大学の近辺では、早稲田と日本女子大、学習院大、学習院女子大、立教大の参加する「fキャンパス」(歩ける距離の意)があり、5大学で1000科目以上を共有している。さらに早稲田大学には、京都で一年を過ごす同志社大との交換学生制度、東京女子医大(医学)、武蔵野美術大(美術)などとの連携がある。

生涯学習機関化

第三のそれは、何歳になろうと、学びたい人は大学に受け入れるという生涯学習機関化だ。今、日本には学習意欲に満ちた熟年層があふれており、その人たちが教室にいることは、一般の学生を大いに刺激する。

国際コンソーシアム大学
徹底的な国際化

第四は、徹底的な国際化である。そもそも西欧中世で大学ができた時、大学はまったく国際的であった。そこで、近代西欧が発展する基盤が培われたのである。異文化の若者同士が出会い共通の課題を考え合うことは、学問の発展に必須である。さらに、国際化が徹底できなければ、留学生はおろか日本の若者さえも入学する魅力を感じなくなる。逆に、国際化され高度な教育と研究を展開できれば、世界中から学生が集まる。少子化は問題とならない。世界の人口はまだ増え続けており、アジアは総体として豊かになりつつあるのだから。最近は、国際的な規模で複数の大学がコンソーシアムを作り、そこに教員、学生を参加させる国際コンソーシアム大学も結成されるようになってきた。早稲田もその一つに参加を決定したところだ。

サイバーキャンパスコンソーシアム(CCC)
国際共同ゼミ

第五は、情報技術(IT)によるオープン化である。国内では、今年から私立大学間のサイバーキャンパスコンソーシアム(CCC)がスタートした。しかし、IT利用は国際間でこそ価値を発揮する。テレビ会議の利用による国際共同ゼミは今や、日常的に行われるようになり、大変な成果を上げている。参加している学生たちは、夏休みに相手国に出かけて合宿するケースも生まれている。

理工系以外でも学産官連携

第六は、学産官連携の推進である。あらゆる面で高度化した日本社会で大学は、進んで二十一世紀にふさわしい新たな社会システムの構築に参加すべきであろう。今後は理工系に限らず、大学の教育と研究が社会の現場と一層結びつく必要がある。

以上が実現すれば、意欲あふれる人々が国境を超えて集い、「アジア太平洋地域における知の共創」が実現される--それが、私のビジョンである。

白井克彦総長

しらい・かつひこ

科省大学設置・学校法人審委員

早稲田大学総長 専門は知能情報学。副総長を経て、2002年11月総長就任。文科省大学設置・学校法人審委員。63歳。

「大学連合」制度

講義内容の確認、大切だ!

(2001年9月29日、毎日新聞)

留学先単位

最近、複数の大学が協定を結び交流する「大学連合」が相次いで行われている。利用者の声も含め、その現状を探った。

多摩地区国立5大学単位互換制度

一橋大

東京学芸大のAさん(3年)は、多摩地区国立5大学単位互換制度を利用して、一橋大の「文化産業論」の授業を受講した。現代の文化産業を学ぶのかと思っていた。

シラバス

ところが実際は、シェークスピア時代の演劇を商業的観点から分析するものだった。Aさんは「私の求めるものとは違っていた。シラバス(講義要綱)があればよかったのに」と振り返る。

ホームページでシラバスを公開している大学もあるが、事情により公開しない大学もある。その場合、早めに大学事務所でシラバスを取り寄せてもらうしかない。

社会科学部

国内留学制度で同志社大に

早稲田大社会科学部のBさん(3年)は「社会を学ぶには個人の心理を知る必要がある」と思い、早大と国内留学制度のある同志社大の文学部心理学科に留学中だ。ゼミにも入り、専攻以外の学問を勉強している。

期間が1年間ということから、学年の制限もある程度緩和されており、同志社大2年の留学生が、3年以上が参加するゼミに特別許可されたケースもある。

単位が認定されない場合も

ただ、大学によっては、留学先の単位が認定されない場合もある。「所属する学部により単位認定の仕方が異なるので注意が必要」(早大オープン教育センター)という。留学したために、留年する場合もある。

山手線コンソーシアム協定校
早稲田大図書館

山手線コンソーシアム協定校(明治、法政など8大学)の総蔵書数は約1200万冊。利用者カードと学生証があれば、本を借りられる。

修士
国学院大院

国学院大院生のCさん(修士1年)は、「各大学でカードを作るのが面倒だ。学生証だけで入れるようにしてほしい」と言う。

しかし、早稲田大図書館によると「学生証のシステムがバラバラなので管理上困難」とのことで、「利用条件なども各大学で異なるので、ホームページで確認してから行ってほしい」。

大学連合

自分の可能性を広げるために、大学連合の制度を利用しない手はない。しかし、システムをよく調べるのが、成功の条件である。