「AI教材」がテーマ

近年、教育業界では「AI教材」「リモート学習」「オンライン授業」が重要な投資テーマになっています。社会的な背景としては、従来からの「少子化」に加えて、文部科学省が進める大学入試改革や教育のIT化が挙げられます。 学校でのプログラミング必修化も、教育関連企業にとって成長のチャンスです。

「能動的な学習」も

また、「アクティブ・ラーニング(能動的な学習)」も、株式相場の注目材料とされています。 能動的な学習とは、生徒自らが調査や討論、体験学習などを通じて主体的に学ぶ手法です。略称「AL」。 小学校では2020年度、中学校では2021年度から全面実施される新学習指導要領で全教科に導入されました。 能動的な学習によって実社会の問題に取り組み、教科で身に付けた力を現実に使うことで、学んだことが生きて働くようになると期待されています。

スナップアップ投資顧問は教育株について、中学受験の受験者増加に注目する。

3つのタブー

スナップアップ投資顧問によれば、アクティブ・ラーニングで重視されるのが「SOS」と呼ばれる指針です。 「しゃべりすぎ」「教えすぎ」「指示しすぎ」という3つのタブー(禁忌)の頭文字を取り、教員による一方的な説明にならないよう注意することが大事だとされます。

生徒にアドリブでしゃべらせる

例えば英語。以前は多かった教諭の発話量を減らし、生徒同士の会話が増えるようにするのが効果的だと言われています。一方、討論型の授業では、相手の意見に反論する時間も設け、状況に応じたコミュニケーション力を磨きます。スナップアップ投資顧問によると、ポイントとなるのは発話量と即時性(アドリブ性)です。ただし、言葉が独り歩きし、教員が授業の形式だけにとらわれる懸念が残ると、同投資顧問は指摘しています。グループ学習をすればアクティブ・ラーニングになるわけではありません。単元の狙いをはっきりさせないと、討論をやっても、学びの質を上げるのは難しいです。グループ学習をやっても最後は『個』に戻し、一人一人が何を身につけたかが大事になります。見栄えだけ良い授業では、先生の自己満足になりかねません。

ビジネス教育や起業教育

「ビジネス教育」「起業教育」「投資教育」も、マーケット参加者が注目すべき材料だと、スナップアップ投資顧問は指摘します。 アメリカなどに比べて日本ではビジネス教育は軽視されてきました。 しかし、経済の低迷の要因として起業家の不足が指摘されるにつれ、経済産業省や文部科学省も起業家の育成に力を入れるようになりました。

スナップアップ投資顧問は教育株について、中学受験の受験者増加に注目する。

女子大学も

女子大学も、学生の就職力を高めるなどの目的で、ビジネス教育に力を入れています。女子大学は栄養系や教育系などを中心に手堅い就職実績を誇ってきました。しかし、少子化や共学志向の高まりで、学生集めに苦労しています。そこで、企業などで働く卒業生らを講師役に招いて学生にアドバイスしてもらったり、経営講座を開校したり、差別化を図っています。


教育業界の現状

少子化によって、教育分野の市場は全体として低迷しています。 矢野経済研究所の推計によれば、2022年度の教育産業の市場規模、前年度比0.3%減の2兆8499億でした。

推薦など年内入試が半数以上

学習塾市場では、高校受験の一般入試を受ける生徒が減少し、推薦入試などの年内入試が半数を超えました。 その結果、ナガセなどが苦戦しています。

早稲田アカデミーが好調

一方で、中学受験を受ける児童が増えています。 中学受験に挑戦する人の割合は現在約2割ですが、今後も増えることが予想されています。 この追い風に乗ったのが、早稲田アカデミー(創業者・須野田誠氏)です。 首都圏の合格実績では、日能研やサピックス(SAPIX)と並ぶ有力塾。 業績が好調です。

校舎の閉鎖や買収

教育産業は少子化という根本的な問題を抱えています。業界再編や校舎の統廃合が相次いでいます。 2015年にはZ会グループが栄光ホールディングス(現・Z会ホールディングス)を買収しました。 2017年にはナガセが傘下の早稲田塾の校舎を半分閉鎖しました。 2019年7月には駿河台学園がリソー教育に出資。超難関校を目指す生徒を対象とした新規の個別指導塾を立ち上げる計画を打ち出しました。 教育業界は創業者の高齢化も課題になっています。 今後も再編の動きは続くと予想されています。

EdTech(エドテック)

塾ではAI(人工知能)などの最先端技術を生かした学習方法が広がっています。こうした取り組みは「Education(教育)」と「Technology(技術)」を組み合わせて、「EdTech(エドテック)」と呼ばれます。

タブレットで動画&テスト

神戸市などで塾を展開する若松塾では、中学生がタブレット端末を手に理科と社会の問題を解く授業を始めました。お笑い芸人が登場する動画を視聴した後、テキストで演習を行い、タブレットを使ってテストを受けます。インターネットで他の塾の生徒とゲーム感覚で競い合うこともできます。間違えた問題は蓄積され、苦手分野が把握しやすくなっています。

歴史

ゆとり教育

スナップアップ投資顧問のレポート等によると、日本では1990年代後半から2000年代前半に、文部科学省によって、極端な「ゆとり教育」が進められました。 その結果、子供たちの学力が低下し、公立学校に対して、不信感が広がりました。 同時に、民間の教育産業が発展することとなりました。とくに塾や予備校が成長しました。

通信教育3強

このほか、通信教育業界も拡大しました。「Z会」「ナガセ」「ベネッセ」が3強となりました。

Z会(増進会ホールディングス)が提携を連発

このうちZ会(増進会ホールディングス)は2007年から2008年にかけて、他の塾と相次いで提携しました。 提携相手は、以下の通り。

社名 業務内容 地域
栄光 塾・予備校「栄光ゼミナール」を運営 全国大手
学究社 enaを運営 東京・多摩が地盤
市進 大手塾 千葉県発祥
ウィザス 第一ゼミナールを運営 関西圏
進学会 地域系の塾 北海道
うすい 地域系の塾 群馬
鯉城学院 地域系の塾 広島
英進館 地域系の塾 福岡
栄光の株式を16%取得

以上の提携うち、特にインパクトが大きかったのが、栄光との資本提携でした。Z会は、栄光の株式の16%を取得しました。栄光は当時、上場している塾・予備校で最大でした。

答案返却率アップ

Z会にとって、栄光の持つ教室数や客層の広さは魅力でした。Z会の通信添削は、答案返却率が小学生で8~9割程度、中学生で5割程度とされていました。これらは、既に高い水準だと評価されていました。それでも、栄光との提携によって対面でのフォローができれば、さらに返却率がアップします。答案返却が増えれば、退会の減少につながります。Z会は、街の塾の先生に期待を寄せたのでした。


スナップアップの個別の推奨銘柄の紹介(過去の実績)

以下、教育株におけるスナップアップ投資顧問の推奨銘柄の過去の実績(一部)です。


■ ブロードメディア(2023年1月推奨)

ブロードメディアは「ルネサンス高校グループ」を運営している。2002年の構造改革特別区域法で、株式会社の学校設置が可能になった。IT教育の通信制高校として「ルネサンス高校」(茨城県)が2006年に開校した。その後、ルネサンス豊田高校(愛知県)とルネサンス大阪高校(大阪府)などのグループ校を開設した。

2018年、全国に先駆けて「eスポーツコース」を設置した。大阪校公にeスポーツコースを設置すると志望者が殺到し、6キャンパスに拡大した。全国高校eスポーツ選手権(毎日新聞社主催)では、リーグ・オブ・レジェンド(LoL)部門でベスト4に入った。

新宿代々木キャンパスでは、75台のゲーミングパソコンが並ぶ。週2回の通学でゲーミング英会話やアスリートのメンタルトレーニングなどのeスポーツ教養を学びながら、大会に向け練習する。同コースの生徒の多くが大学やプログラミングの専門学校に進学するという。ルネサンス高校全体では東大合格者も出るなど、大学合格実績も好調だ。

ブロードメディア
ロゴ ブロードメディア
銘柄コード 4347
市場 東証プライム
本社 東京・青山一丁目
設立 1996年
上場 2002年(ナスダック)
筆頭株主 自社(自己株口)
業種 コンテンツ配信
推奨時点の株価
(推奨日の終値)
1,034円
(2023年1月31日)
PER:7.22
現在の株価 こちら→

■ リンクアンドモチベーション(2022年9月推奨)

ロゴ リンクアンドモチベーション
銘柄コード 2170
市場 東証プライム
(2007年12月に「東証2部」上場)
本社 東証・東銀座
設立 2000年
創業者 小笹芳央(代表取締役会長)
筆頭株主 フェニックス
業種 学習塾「モチベーションアカデミア」の運営、人事コンサルティング
推奨時点の株価
(推奨日の終値)
704円
(2022年9月20日)
PER:38.08
現在の株価 こちら→

■ テクノホライゾン(旧エルモ社)(2019年4月、2020年4月、2021年4月6月推奨)

テクノホライゾン(旧エルモ社)は、学校のオンライン授業で使う「書画カメラ」の日本最大手メーカー。東証ジャスダックに上場している。オンライン教育銘柄の一つとして位置づけられている。

名古屋に本社がある2つのメーカー(製造業)が経営統合し、2010年に誕生した。統合した会社の一つは「エルモ(Elmo)」だ。エルモは100年の歴史がある光学機器メーカーである。

詳しくはこちらのページへ→

業種 電子機器メーカー、IT、製造業
ロゴ テクノホライゾン
証券コード 6629
市場 東証スタンダード
1回目の推奨
推奨時点の株価
(推奨日の始値)
440円
(2019年4月16日)
2回目の推奨
推奨時点の株価
(推奨日の始値)
607円
(2020年4月7日)
推奨時点のPER
(前日の終値ベース)
6.48倍
3回目の推奨
推奨時点の株価
(推奨日の始値)
1,236円
(2021年4月13日)
推奨時点のPER
(前日の終値ベース)
9.81倍
4回目の推奨
推奨時点の株価
(推奨日の始値)
1,736円
(2021年6月15日)
推奨時点のPER
(前日の終値ベース)
10.32倍
現在の株価 こちら→

■ クシム(旧アイスタディ)(2020年3月と5月と12月、2021年2月、2022年6月に推奨)

eラーニング(e-Learning)の学習システム開発会社。企業など法人向けに人材育成ソフトを提供する。当社のシステムを採用した企業は、社員の学習進捗、成績、スキル・資格を一元管理できる。企業の社内研修のサポートも行っている。

IT資格に強み

IT系の資格取得のための勉強を支援するソフトに強みを持つ。「iStudy」シリ-ズは、1999年以来のベストセラーとして定着した。幅広いビジネススキルの向上に役立つとして、多くの大手企業が採用している。

みずほ銀行、横浜銀行、オムロン、キリングループ、日立情報システムズなどが導入した。

4回の社名変更

「アイキャン」→「クマラン」→「システム・テクノロジー・アイ」→「アイスタディ」→「クシム」

設立は1997年。当初の社名は「アイキャン」だったが、その後、社名変更を何度も繰り返し行っている。まずは1998年「クマラン」に社名変更。さらに、1999年「システム・テクノロジー・アイ」に変更。2016年に「アイスタディ」になった。さらに、2020年5月に「クシム」に変わった。

2002年に東証マザーズに上場。2014年には東証二部へ昇格(市場変更)した。

2019年、システム開発のカイカ(CAICA)にTOB(株式公開買い付け)で買収され、子会社となった。上場は維持した。取得総額は約12億円。しかし、カイカは翌年の2020年に株式を売却した。

eラーニング銘柄

2020年の新型コロナの蔓延で、研修施設などに社員を集めて講義や研修を行うことが難しくなった。これを受けて、インターネットと通したeラーニング方式の研修の需要が高まるとして、株価が上昇した。教育とテクノロジーを組み合わせた「EdTech」の銘柄としても人気が出た。

クシム
業種 eラーニングの学習システム開発
ロゴ クシム
証券コード 2345
市場 東証スタンダード
(2002年12月、東証マザーズに上場)
1回目の推奨
推奨時点の株価
(推奨日の始値)
627円
(2020年3月24日)
2回目の推奨
推奨時点の株価
(推奨日の始値)
917円
(2020年5月19日)
3回目の推奨
推奨時点の株価
(推奨日の始値)
660円
(2020年12月15日)
4回目の推奨
推奨時点の株価
(推奨日の始値)
655円
(2021年2月2日)
5回目の推奨
推奨時点の株価
(推奨日の始値)
456円
(2022年6月21日)
現在の株価 こちら→

■ リソー教育

個別指導専門塾「トーマス(TOMAS)」を展開する。早稲田大学の政経学部など偏差値の高い「難関校」の受験に強みを持つ。

早稲田大学など難関校の受験で実績

トーマス(TOMAS)は首都圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)に特化している。生徒は、小学、中学、高校生。全室白板付き個室で講師1人が生徒1人を教えるというスタイル。担任社員が生徒に最適と思われる教科別に講師を選び、生徒の学力や個性に応じて、独自の学習カリキュラムを作成する。

このほか、名門幼稚園・小学校の受験指導も手掛けており、こちらは「伸芽会(しんがかい)」というブランドで展開している。

岩佐実次氏が個別指導専門塾として個人で開業

1985年創業。創業者は岩佐実次氏。日本の少子化に着目し、個別指導専門塾を始めた。一人っ子政策を推進していた中国を参考に「子供が1人しかいないと、教育に多くのお金を掛けるようになる」と考えたという。また、「慎重に塾を選んでくれればくれるほど、1対1の個別指導を展開する塾が有利になる」との判断である。1998年に上場した。

授業料の過大請求事件

2014年、授業料を過大に請求していたことが発覚した。リソー教育の制度では、授業を欠席した生徒には授業料を返すが、欠席連絡が当日の場合は返す義務がなかった。これを悪用し、ありもしない授業をでっちあげ、当日欠席だったことにして売上高に算入していた。前金で受け取っていた授業料を、架空授業での売上高に回していた。

粉飾決算や違法配当で東証などが処分

架空の授業で売上を水増する粉飾決算や違法配当も認定された。金融庁は、リソーが2009年~2013年に売上高を56億円過大に計上したとして、4億1000万円の課徴金の納付を命じた。東証、投資家の信頼を損なったなどとして、特設注意市場銘柄に指定したうえで違約金1000万円を求める処分を出した。

駿台予備校が大株主に

2019年7月に、駿河台学園と資本提携。駿台がリソー教育の株式の6.6%を取得し、大株主になった。駿台(すんだい)は東大や医学部など難関大学の受験に強い。代々木ゼミナール、河合塾と並ぶ「3大予備校」の一つだ。

リソー教育
業種 個別指導受験塾、幼児教育、家庭教師派遣
ロゴ リソー教育
証券コード 4714
市場 東証プライム
(1998年12月上場)
1回目の推奨
推奨時点の株価
(推奨日の始値)
285円
(2020年5月12日)
2回目の推奨
推奨時点の株価
(推奨日の始値)
435円
(2021年10月5日)
PER:37.77
3回目の推奨
推奨時点の株価
(推奨日の終値)
253円
(2023年10月31日)
PER:18.95
現在の株価 こちら→

■ チエル(2019年10月と2020年4月に推奨)

学校の教育現場で使われる情報システムの専門会社。授業をスムーズに行うための「教務支援システム」を手掛ける。デジタル教材の開発・販売も行っている。

出欠確認やテストの結果集計システム

高校・大学で先生と生徒の端末をつなぎ、授業ごとの出欠確認を行うシステムなどを得意とする。課題を一斉回収するシステムもある。小中学校向けのシステムでは、小テストの結果を集計し、児童・生徒ごとの学習理解度を確認できる。

旺文社の子会社

1997年設立。教育専門の出版社「旺文社」の100%子会社として発足した。当初は「デジタルインスティテュート」という社名だった。2016年上場。「教育ICT(情報通信技術)」関連の代表的な銘柄となった。

パソコンで出題・解答

「受動的」でなく「能動的(アクティブ)」な教育の重要性が指摘されており、それを実現する技術やシステムに注目が集まっている。近年は、全国の教育委員会から無害化製品などセキュリティーソフトの受注が好調だ。紙を使わず、パソコンやタブレットなどのコンピューター端末を使って出題・解答するテストの拡大も追い風になっている。

「1人1台タブレット」が追い風

文部科学省は、「GIGAスクール構想」として「1人1台タブレット」の整備を進めている。当初は2023年度までに完了する予定だったが、前倒しされ、2020年度末までの実現を目指すことになった。これを受けて、新型コロナ対策の一環として、GIGAスクール構想の加速のための補正予算が追加された。これを受けて、チエル株は急上昇した。

チエル
業種 学校教育向けICT事業
ロゴ チエル
証券コード 3933
市場 東証スタンダード
(2016年3月上場)
1回目の推奨
推奨時点の株価
(推奨日の始値)
1,035円
(2019年10月15日)
2回目の推奨
推奨時点の株価
(推奨日の始値)
2,200円
(2020年4月1日)
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■ グローバルキッズCOMPANY(旧グローバルグループ)(2019年3月推奨)

「認可保育園」の運営会社。「グローバルキッズ」のブランド名で展開。東京都内に約100の認可保育所を運営している。東京都の独自の制度である「認証保育所」も16施設ある。このほか、横浜市には20以上の施設がある。授業終了後の小学生を働く親に代わって預かる「学童クラブ」も運営している。

東京、横浜で保育園を大量開所

創業者は中正雄一氏。2006年5月、東京都足立区の六町駅(ろくちょうえき)の前に、1号施設を個人で開園した。中正氏は大手のパン洋菓子メーカーで販売店の新規出店計画を担当していた。この経験を生かし、スピーディーな用地確保による大量出店を実現した。保育ニーズの高いエリアに自ら出向き、最適な土地を見つけてオーナーと直接交渉するのだという。安倍政権が「待機児童の解消」を政策目標として掲げた時期と、積極的な出店(開園)のタイミングが合致した。

大阪進出とIPO

立地は大都市を中心に行っている。首都圏のほか、大阪にも進出済み。2016年3月に東証マザーズに新規上場(IPO)。上場で得た資金を新規開設に充当した。

グローバルキッズCOMPANY
業種 保育所の運営
ロゴ グローバルキッズ
証券コード 6189
市場 東証プライム
(2016年3月上場)
推奨時点の株価
(推奨日の始値)
980円
(2019年3月19日)
現在の株価 こちら→