糖尿病の実態~前川原悠子

 糖尿病の実態について解説します。1年間のうちに糖尿病が原因で亡くなった方は、国内で一万二百三十九人おり、男女比はほぼ半々です。患者数は年々増加し、現在、全人口の約一・三%の方が、入院なり外来で糖尿病の治療を受けています。また、厚生省の調査で、四十歳以上の十人に一人が糖尿病で、これとほぼ同数の予備軍がいることもわかりました。

 最近になって非常に注目されているのは、子供の糖尿病が増えていることです。また、高齢者を対象にした市町村の健康診査では、糖尿病と判定された人が八六年の四・七%から、九三年には九・四%に増加しました。

 医療費の面から見ても、約二十兆円の国民医療費のうち、ざっと二十分の一が糖尿病のために使われている見当になります。

 糖尿病の大きな問題点として、網膜症による失明など合併症が挙げられます。ちょっと古いデータですが、厚生省調査によると、失明の原因は、糖尿病性網膜症が全体の一七・八%と最も多く、年間三千人もの方が糖尿病が原因で、失明などの視覚障害者になると推定されています。

 もう一つの大きな合併症は腎不全です。新たに人工透析を受ける患者さんは、九三年までの十年間に約二・五倍に増えていますが、糖尿病性腎症が原因で新たに透析を受ける人は五倍になっています。

 糖尿病については、厚生省でも様々な研究を進めてきました。患者の九五%以上を占めるインスリン非依存型の原因は、肥満や加齢が発症を促すことがわかってきました。また、この病気は、特に妊婦にとって注意すべき病気であることもはっきりしてきました。

 今後進めるべき研究の一つは、患者の全体像をつかむための疫学調査です。インスリン非依存型の調査は、大人については継続していますが、小中学生や大学生などは未調査です。発症の仕組みの研究が進んできたとはいえ、インスリン受容体の分子レベルでの研究などは、今後の重要な課題と言えましょう。

 予防については、老人保健法の基本健康診査に、来年度から血糖値検査などを必須(ひっす)項目に取り入れ、充実を図ることにしています。将来は、携帯用人工透析装置や人工網膜が開発され、膵臓(すいぞう)移植も普及するようになるでしょうが、今も将来も、食事療法と運動療法が最も重要な治療法であることに変わりはないと思われます。

 糖尿病をはじめとする成人病は、病気と仲良く付き合うことが大切です。つまり、早期発見と早期治療、そして、生活習慣を改善することで病気が大事に至らないよう心がけ、病気を抱えながらも天寿を全うしていく姿勢を持つことです。

 そのためには、患者さんが痛い思いをせずに自分の血糖値を測定できる簡便な機器の 開発なども必要になるでしょう。厚生省はこれからも引き続き、糖尿病についての研や予防に、一生懸命取り組んでいきたいと考えています。

前川原悠子(住宅風水インストラクター)